土鍋の選び方で 料理の味まで変わります!

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寒い時期の定番である鍋料理。それに欠かせないアイテムが“土鍋”です。そして土鍋は様々な料理で使えるところも魅力の一つ。

そんな土鍋、どれでも同じじゃないの?と思うかもしれませんが、実は選び方ひとつで料理の味にぐっと差が出るんです。どうせ買うなら良いものを選んで長く使いたいですよね。

土鍋は家族で食べるときだけでなく、実は一人や少人数のときでも使い勝手が良いです。普通の鍋よりゆっくり火が通るため、よりおいしく料理を作れます。

ひと口に土鍋といっても いろいろ種類があります

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土鍋はどれも同じでは?と思われがちですが、素材や形には種類があり、萬古焼・伊賀焼・セラミックなどの種類があります。日本の伝統工芸品としてもおなじみの銘柄ですが、使われている陶土や焼き方の違いで土鍋にも大きく影響が現れています。

▼萬古焼(ばんこやき)
三重県四日市市の代表的な地場産業である陶磁器・焼き物の一つ。土鍋の国内シェアは7~8割を占めているんだとか!

土の素材にはペタライトという鉱物を使用しているため、 耐熱性に特にすぐれていて、空焚きや直火に対しても強いのが特徴です。IH対応やタジン鍋タイプのものもあります。

バリエーションが豊富なため、自分の好きなデザインを選びやすいです。また、表面が滑らかにできているので、お手入れが簡単という特徴も。

▼伊賀焼(いがやき)
鎌倉時代から盛んになったと言われる伊賀焼は耐火度や蓄熱力が高く、熱を穏やかに伝える粗土が魅力です。煮込み料理などのゆっくり加熱する料理におすすめされる土鍋です。

粗土の風合いが焼き物の魅力的な部分であり、料理を見た目から楽しむことができます。

土の目が粗い分、食材のニオイ移りや水漏れなどの心配があるので、「目止め」は忘れずに行いましょう。

▼セラミック
高温で処理した陶磁器の製品がセラミックと呼ばれています。IH対応のものが多くデザインも洗練された海外の製品が主流です。機能性が高くオシャレで洋風な土鍋を探しているならセラミックがおすすめ。

質感がなめらかで、ニオイがつきづらいのも特徴です。ニオイの強い煮込み料理や韓国料理、ブイヤベースなどにも使用できます。比較的お手入れがしやすいため日常的な使用にも向いています。セラミックは若干壊れやすいという特徴もありますので、洗う際や片付けるときには慎重に扱うようにしましょう。

※ちなみに、鍋で有名なル・クルーゼは鋳物ホーロー素材なので、今回の土鍋ランキングの対象ではありません。

土鍋を買ったら かならず“目止め”を!

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みなさんもなんとなくご存知と思いますが、土鍋を買ってきたらすぐに使うのはNG。新しい土鍋は使い始める前に、必ず目止めという前処理が必要です。これによってひび割れや水漏れを防ぐことができるんです。

まずは土鍋をよく水洗いし、自然乾燥でしっかり乾かします。その後、その乾いた土鍋でお粥を炊き、その後1時間以上おかゆを入れたまま放置して冷まします。おかゆも土鍋も十分に冷めたら、おかゆをきれいに取り出し、また水洗いして乾かしておきます。

おかゆは生のお米から炊くと時間がかかるので、「残りごはん」でおかゆを炊いてトロトロの糊状の液体を土鍋に染み込ませるのがおすすめ。できれば一晩置いておくとベストですよ。

また土鍋を長く使い続けるために、説明書に沿って素材に適した正しい方法で手入れをするようにしましょう。土製は急激な変化に弱いです。調理後すぐに洗おうとすると急冷されてしまうので、しばらく本体の熱を冷ましてから流水で洗うようにしてください。

洗うときには堅い素材だと土が削れてしまうので、柔らかいスポンジで洗いましょう。洗い終わりには余分な水分を拭いてから、風通しの良い場所で完全に乾かして収納してください。乾燥が不十分だとカビの原因になるので注意しましょう。

次に、気になる土鍋の選び方について確認しておきましょう。

土鍋選びでは 3つのポイントをチェック!

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一般的に土鍋は分厚ければ分厚いほど、食材に熱がじっくり伝わっておいしくなると言われていますが、本当のところはどうなのでしょうか?

見た目や口コミだけで選んでしまって失敗というのは避けたいですよね。検証に入る前に、まずは選ぶうえで大事なポイントをチェックしておきましょう。

[ポイント①:サイズと形]

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まず「何人で食べることが多いのか?」がサイズを決める基準となります。大きすぎても小さすぎても料理がしづらくなるので、使用人数に合ったサイズを選ぶことが大切です。

3号から10号まで8種類あり、1人用なら4~5号、2・3人用なら7~8号、4・5人用なら9~10号が大きさのめやすです。目安としての大きさを基準に、食べる量が多い男性や子どもがいる場合には1つ大きめのサイズを選ぶなど調整しましょう。

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また、どんな形状を選ぶかもポイントです。スタンダードな浅型や、おでんやポトフなど具材の多い料理に適した深型の他に、炊飯用の土鍋もあります。どんな用途で使いたいか、しっかりイメージして選びましょう。

家族の人数が多い場合や大人数で鍋パーティーをする場合には口径が広く、取りやすい方がおすすめです。卓上で使うときには浅型がいいでしょう。

汁気の多い料理には深型がおすすめです。おでんやポトフなどを超する場合に具材が大きくても吹きこぼれにくく、じっくりと煮込むことができますよ。また1人用としても使いやすく、煮込みうどんなどスープを使った料理も温かいまま食べられます。

[ポイント②:加熱方法は?]

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実際に熱を加えるのはIHなのかガス火なのか。レンジやオーブンでも使いたいのか。それによって対応する土鍋も変わってきます。特にIHの場合は対応していないと使えないので要注意!

IHの場合はセラミック製のものや、鍋底に反熱板を用いるタイプのものなどがあります。IHは鍋を認識しない場合には使えないので、間違えずに購入するようにしましょう。

[ポイント③:耐久性]

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土鍋は陶器なので割れる恐れがありますが、陶器の中も強度はさまざま。水漏れを防いで長く使うために先ほどご紹介した目止めの下準備も大事ですが、耐久性の高い素材を選ぶことも大切です。

土鍋にはこんな機能がある種類も!

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近年は土鍋の機能性も高くなってきています。調理などが面倒!という人にも、おすすめの土鍋がありますので参考にしてみてください。

電子レンジ対応
忙しくてあまりガスを使って料理をしない人や、できれば時短をしたいという人には電子レンジ対応の商品がおすすめです。IH非対応のものもありますが、ガスと兼用で使うことができるので、普段は電子レンジで、時間のあるときにはガスを使って調理をするなど使い分けをすることができますよ。

ミトンを使わなくても持てる
土鍋は全体が同じ素材で作られているものが多いので、ガスで調理をするときには持ち手も熱くなってしまい、素手で触るのはとても危険です。

しかし持ち手がゴム製でできている商品であればミトンを使う必要がないので、持ちやすく落とす心配もなく、キッチンから食卓に運ぶのも楽に行うことができます。

土鍋を真っ二つにして 美味しく作れる土鍋を検証!

土鍋を真っ二つにして美味しく作れる土鍋を検証! イメージ

買うときにはなかなかわからないのが、鍋の厚さ仕上がりのおいしさの違い。これらを今回はプロの陶芸家・角谷啓男さんとともにテストし、最強の土鍋を選びました。

[テスト項目①:味覚検証]

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鍋によって出来上がりのおいしさに違いが出るのかを検証しました。それぞれの土鍋に寄せ鍋のストレート出汁を入れて沸騰させ、10分煮込んだときの出汁の味の変化、野菜の火の入り方を比較しました。

[テスト項目②:切断調査]

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土鍋の厚さを計測。電動刃で真っ二つにカットし、切断面の厚みとつくりをプロの陶芸家が徹底検証しました。

この2つの項目で、鍋の分厚さとおいしさの関係を検証しました。その結果は意外な方向に…

それでは 土鍋おすすめランキング4選の結果発表です!

美味しさでダントツ! 買って間違いない「菊花」

銀峯陶器:萬古焼 菊花 土鍋 8号 2人前 瑠璃:調理器具

銀峯陶器
萬古焼 菊花 土鍋
8号 2人前 瑠璃
実勢価格:2380円

IH非対応

1位獲得は銀峯陶器の「萬古焼 菊花」です! 出汁本来の旨味が感じられ、4製品の中で一番おいしく感じました。素人でもその味の違いがわかるほど。これには驚きです。

▼テスト結果
 味    :◎
 耐久性  :◯
 温度変化 :△

 総合評価 :S

こちらは切断調査の結果です。厚さは4.5~5.0mmで、最も分厚い土鍋に比べると1.5~2mmも薄い

美味しさでダントツ!買って間違いない「菊花」 イメージ

底には鉄分の多い赤土が使われています。置いたときの安定感や、きれいに塗られた釉薬など、丁寧につくられていることがわかりました。

美味しさでダントツ!買って間違いない「菊花」 イメージ2

味の面で他と大きく差がつきました。他の鍋では煮込むと出汁にしょっぱさやえぐみが出たのに対し、こちらの「菊花」では出汁そのもののおいしさが続きました。いま土鍋を持っている人にも買い換えをオススメできる品です!

角谷啓男 氏
陶芸家
角谷啓男 氏 のコメント

冬の土鍋には絶対コレを選んでほしい逸品です!

取っ手の空気穴が要注意! 味はおいしい「HARIO」

HARIO:フタがガラスの土鍋 8号 MN-225B:調理器具

HARIO
フタがガラスの土鍋
8号 MN-225B
実勢価格:3334円

IH非対応

2位はHARIOの「フタがガラスの土鍋」です。おいしさの検証ではややしょっぱさを感じましたが、まずまずの結果でした。

▼テスト結果
 味    :◯
 耐久性  :△
 温度変化 :◯

 総合評価 :A

こちらは切断調査の結果です。急に冷水・熱湯をかけても丈夫なつくり

取っ手の空気穴が要注意!味はおいしい「HARIO」 イメージ

ただぶつかったときの衝撃には弱いです。そして、取っ手に空気穴があるので少し危険……。

味はさほど変化がなかったものの、取っ手の安全面と耐久性の面で惜しくも2位となりました。

深鍋でたくさん入るけど 味がザンネンな「銀峯」

銀峯陶器:萬古焼 銀峯 土鍋(深鍋) 8号 2-3人用 花三島:調理器具

銀峯陶器
萬古焼 銀峯 土鍋(深鍋)
8号 2-3人用 花三島
実勢価格:2160円

IH非対応

Amazonのレビューの評価はなかなかですが、味のしょっぱさがかなり目立ちました。

▼テスト結果
 味    :△
 耐久性  :◯
 温度変化 :△

 総合評価 :B

切断調査したところ、1位の「菊花」よりもやや膨らみがある形状ですが、厚さはほぼ同じでした。

深鍋でたくさん入るけど味がザンネンな「銀峯」 イメージ

深型のためか、他製品より沸騰がゆっくり。たっぷり入るメリットはありますが、味に角が立ってしまったのが残念でした。

4位: いちばん分厚いけど
味の評価はワーストの「楽」

リビング:深型土鍋 8号(約24cm) 楽 3-4人用:調理器具

リビング
深型土鍋 8号(約24cm)
楽 3-4人用
実勢価格:1784円

IH非対応
※Amazonは現在品切れ中

出汁にえぐみを感じるほど、おいしさは低評価でした。ここまで味が変わってしまうとは残念です…。

▼テスト結果
 味    :×
 耐久性  :◯
 温度変化 :△

 総合評価 :C

切断調査をしてみると、4製品の中で一番厚みがありました

4位: いちばん分厚いけど味の評価はワーストの「楽」 イメージ

厚みがあるから美味しいという定説を覆す衝撃の結果に。大きく味が変わってしまう点が致命的なマイナスポイントでした。

[結論] 分厚いから旨い説は 間違いだったと判明!

[結論] 分厚いから旨い説は間違いだったと判明! イメージ

今回4製品をテストしてみて、もっとも分厚い「楽」が一番おいしくないという衝撃の結果に……。分厚さがおいしさに直結するわけではないことがわかりました。また、国内シェアの7~8割を占めるという萬古焼ですが、検証してその優秀さを実感しました。

土鍋の購入を検討しているならば、出汁そのものの旨味をおいしく味わえる「菊花」が断然オススメですよ!