客観的な事故発生時の映像は 運転トラブルの「動かぬ証拠」

車の運転をする人なら、誰でも1度くらいはトラブルに遭ったことがあるのではないでしょうか。東名高速道路であおり運転を受け、追い越し車線に車を停めさせられたあげく、後続のトラックに追突されて2名が亡くなるという痛ましい事故は記憶に新しいところです。その後も各地で「あおり運転」によるトラブルが各地で報じられています。また最近の傾向としては、スマホを操作しながらの「ながら運転」による事故も増えています。

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車を運転する人にとっては他人事とは思えないこういったトラブルには、信号の色など当事者同士の意見が一致しないことも往々にしてあります。また「あおり運転」によるトラブルでは、相手の誘いに乗って外に出ると大変な目に遭ってしまうことも。こんなとき「動かぬ証拠」として役立つのがドライブレコーダーです。

◎実際に撮影した動画


ドライブレコーダーは、事故発生時の現場の状況を機械的に記録した映像です。映像が客観的なので、裁判でもドライブレコーダーが証拠として取り扱われるだろうという認識をしていました。しかし、読者からの情報提供で、その認識が必ずしも正しくない可能性が出てきました。

ドライブレコーダーの映像が 証拠にならない場合がある?

編集部宛に届いた読者からのメッセージは、ドラレコ映像が裁判で証拠として認定されない可能性を示唆するものです。

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※投稿者情報はイメージで作成していますが、内容は原文ママとなります。

こちらの方のケースでは、どうやらドライブレコーダー(以下、ドラレコ)の映像が証拠として扱われなかった様子。警察官の方では確認をしない、刑事事件では意味がないという内容でした。

ということで、ドラレコの映像がどれくらい使えるものなのか、交通事故に詳しい弁護士の方に話を聞きました。

ドラレコ映像の7割は 「重要な証拠」となります

弁護士法人ALG&Associates東京オフィスの荻野正晃弁護士に、ドラレコ映像の証拠としての価値を聞いていきます。

編集部 そもそもドラレコの映像は、交通事故の証拠となりえるのでしょうか。

ドラレコ映像の7割は「重要な証拠」となります イメージ

弁護士法人ALG&Associates東京オフィス
荻野正晃弁護士

荻野弁護士 ドラレコの映像は証拠になります。私が取り扱った交通事故案件のうち、5割の車にはドラレコが搭載されていました。ドライバーの間では、ドラレコがかなり浸透していますね。感覚的には7割ほどが「重要な証拠」として取り扱われています。

編集部 ネット上では「デジタルデータには、改ざんの恐れがあることから証拠にはならない」という話も上がっていますが、そのあたりはいかがでしょうか。

荻野弁護士 ケースにもよりますが、ドラレコの映像の改ざんは、技術的に可能とする人間が極めて少ないことから、基本的には考えられないとされています。したがって、ドラレコの映像は、裁判でも証拠として重要な価値があります。

極めて重要な「信号の色」。 これが映るドラレコが必須です

編集部 では証拠として使えないのは、どのような場合でしょうか。

荻野弁護士 重要なのは「信号」です。ドラレコの性能が低く、信号の色が判別できない場合はダメです。というのも、事故の瞬間に映っている信号の色が、証拠として最も意味があるんです。追突時の信号が青だったのか赤だったのか、これによって当事者の扱いが大きく変わってきます。特に深夜帯など目撃者が極めて少ない場合には、決定的証拠になることが少なくありません。

極めて重要な「信号の色」。これが映るドラレコが必須です イメージ

ドラレコが証拠となるには、この写真のように信号が完全に見え、かつ色が識別できることが大切なんですね。

編集部 つまり、信号が映っていない場合は証拠にならないということですね。

荻野弁護士 そうですね。過去には車のボンネットしか映っていないケースもありましたが、これでは証拠として使えません。やはり証拠として使うには、車の前方がきれいに撮れていて、信号の色が飛んでいないこと、これに尽きます。

交通事故が刑事事件になった場合、警察が主導となり実況見分を行います。これにより調べてわかる情報までは、無理にドラレコに記録する必要はありません。ドラレコには後方が撮影できるタイプや360度撮影できるタイプもありますが、こういった高額モデルを証拠として使う必要性はなさそうです。

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ドラレコ映像で自分の違反が 発覚するケースもあります

ドラレコ映像に残っているのが、自分自身が違反をしていた証拠であったこともあるようです。

ドラレコ映像で自分の違反が発覚するケースもあります イメージ

編集部 ドラレコを確認したら、被害者のハズだったのに実は自分も違反者だった、という事例もあるようですね。

荻野弁護士 はい。事故直後は「相手が悪い!」と主張していた人が、ドラレコの映像を確認してみたら信号無視をしていた、ということがありました。このケースのように、ドラレコを搭載したことで「これで安心だ」と心理的な油断が生じて、交通事故を起こしてしまう人は珍しくないんですよ。

このように「ドラレコが自分の不利な証拠として残ってしまう」ケースもあります。ドラレコを搭載する以上、絶対に加害者にはならないという意思を持って運転することが大切です。

SNSへの安易な映像流出は 名誉毀損になる恐れもあります

自衛の手段として撮影した映像でも、データそのものの取り扱いには注意が必要です。映像には車のナンバーなど、個人情報が映っている場合があります。それが元でトラブルになることがあるようです。

編集部 ドラレコのデータを持ち出して話がこじれてしまう場合があると聞きましたが、どういうことでしょう。

荻野弁護士 民事事件の場合、和解を前提にしています。SNSなどで映像を公開してしまうと、相手が悪い事故だったとしても、名誉棄損で訴えられてしまう可能性があるんです。

確かにSNSなどへの個人情報の流出は問題になりそうです。事故に遭った時には弁護士に相談をして、ドラレコのデータを慎重に扱いましょう。

ドラレコを設置するなら必要な情報を、しっかり記録できるようにセットしましょう。日頃から安全運転を意識して、それでも交通事故に遭ってしまった時に助けとして、ドラレコを活用していきたいですね。