ドタバタ格安SIMのここがヘン! 今後はどうなる!?
2018年01月10日(水)
東 春樹
東 春樹/Test by 家電批評編集部
ドタバタ格安SIMのここがヘン! 今後はどうなる!?
楽天が5億2千万円という破格値で格安SIM「フリーテル」を買収したというニュースは通信業界に衝撃を与えました。そして先日プラスワン・マーケティングは民事再生法の手続き開始に移りました。かつて、増田社長が「10年で世界一のメーカーに」という目標を高々と掲げ、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げたフリーテル。一体どこでボタンを掛け違えたのでしょう。その迷走劇をここで改めて振り返りましょう
  • 身の丈以上の事業展開が
    首を絞める結果に
先日格安SIMブランド「フリーテル」を運営していたプラスワン・マーケティングの民事再生法申請が発表されました。「あれ、ちょっと前まで佐々木希のCMやってたはずじゃ」と思った人も多いのではないでしょうか。

そして、楽天が移動体通信事業者(MNO)による携帯電話事業へ参入することが報じられました。これはつまり、ドコモ、ソフトバンク、auに続く第4のキャリアが誕生することを意味しています。

じつはこの2つのニュース、遠からぬ関係があるのです。

先立つ2017年9月、楽天がフリーテルの通信事業の買収を発表。同年11月1日をもって正式承継することが決定しました。業界では、フリーテルの運営会社であるプラスワン・マーケティングの業績不振は周知の事実であったため、買収自体のインパクトはそこまで大きくなかったのですが、それよりも5億2千万円という破格での買収に対して驚きの声があがりました。それもそのはずで、先立って発表されたKDDIによるBIGLOBEの買収価格が約370億円ということを考えると、破格といえます。
では、まさに「買い叩き」にあったフリーテルがここまで凋落した原因は一体どこにあったのでしょうか。スマホジャーナリストの石川温氏は「実は格安SIM業者で黒字を出している企業はない。それでもやっていけるのは、他に赤字を補てんする本業がしっかりしているから。一方でフリーテルはベンチャーでもともと資金力があるとは言えず、かつ端末事業にMVNO事業をバックアップするだけの体力がなかった」と指摘しています。

にもかかわらずフリーテルは、イメージキャラクターにタレントの佐々木希や高田純次など大物を起用し、CMをはじめとする大胆なマーケティングを積極的に打ち出したのです。

またそれにとどまらず、ほぼ毎月派手な新製品発表会を開くなど、多額の支出があったことは想像に難くありません。そのおかげもあって、約3年でMVNO業界でも急成長を遂げたフリーテルですが、資金源のほとんどを増田薫社長の人脈による投資に依存していたようです。

同じくスマホジャーナリストの佐野正弘氏は、MVNO市場の拡大により危機感をもった大手キャリアが顧客流出を防ぐ対策を取り始めたことが、少なからずフリーテルの新規顧客獲得に影響を与えたことを指摘しています。「後ろ盾がないベンチャー企業にもかかわらず、最初から大きく勝負にでたのは、新規顧客の獲得に自信をもっていたから。ところが、大手キャリアであるソフトバンクがワイモバイルに注力し始めたり、auがBIGLOBEを買収したりといった動きに加えて、より安い料金プランを新たに投入するなど、顧客流出防止の対策を取り始めました。これにより、フリーテルのようなベンチャー系のMVNO業者が新規ユーザーを獲得しにくくなってしまったのではないか」

MVNO市場の成長に貢献したベンチャー系のMVNO業者が、同じ理由で淘汰されることになったというのはなんとも皮肉です。
  • 行政指導からスピード改ざん疑惑まで
    フリーテルを取り巻いた噂の数々
そもそも、フリーテルの凋落を予想していた識者は少なくありませんでした。先述の石川氏は当初よりフリーテルの経営方針に無理があったのではないかと疑問を持っていたといいます。

実際に、アップルやサムスン、はたまたファーウェイなどの強力な第三勢力がいるなかで、増田社長が「10年後に世界一のメーカーになる」というコメントを繰り返していたことや、2016年に発表された、「1年以内に国内200店舗を目指す」という方針は、根拠に乏しく、首を傾げざるを得ない部分があったというのです。

実際に、フリーテルについてはかねてからいろんな悪評やうわさが流れていました。代表的なものとしては、2017年4月に景品表示法違反によって、消費者庁および、総務省による行政指導を受けたことがあります。これは簡単にいうと、新規顧客の獲得について不当な表示を行っていたということですが、具体的には、当時「業界最速」をうたっていた通信速度について、平日の12時に測定していたことを注釈しなかったことを指摘されたのです。

さらに、SIMカードの販売シェアNo・1をうたっていましたが、実際、ヨドバシカメラのみにおいてということで、これが業界No・1とも解釈できる内容であったこと。また、アプリや動画サイトなど特定のサービスの通信量が無料になる「カウントフリー」プランについては、無料をうたいながらも一部のサービスでは課金対象であることを記載していなかった事実を指摘されています。

また、ユーザーからの批判が多く集まった「スマートコミコミ+」も記憶に新しいエピソードです。これは、フリーテル製の端末を購入することで加入できるプラン。10分かけ放題、データ通信、端末保証がセットで毎月999円の格安料金で利用できるというものでした。
※画像はフリーテル公式サイトより

しかし、端末の分割料金が通常の2倍に設定されていたうえ、3年縛りのため他社に乗り換えた場合、超割高になるといった内容。おまけに公式サイトではわかりづらいという、まさに「うまい話には裏がある」内容で、多くの批判を受け後に変更されることになりました。

さらに、ユーザーの間でうわさが流れたのが、スピード改ざんの問題です。それは、スピードテストアプリでの測定数値が高速であるにもかかわらず、動画再生などにコマずれやカクつきが見られるなど、低パフォーマンスであったことから、スピードテストアプリにのみ通信を高速にするような改ざんを行っていたのではないかというもの。なお、フリーテルはこれを完全否定しています。

増田社長が豪語していた「全国200店舗計画」についても、本誌編集部のSIM担当は首を傾げます。店舗拡大に強気である割には、店頭サービスクオリティは決して褒められたものではなかったということです。
店舗スタッフは、知識のない一般消費者にサービスの内容をわかりやすく伝えるために、ある程度の知識は備えておく必要がありますが、実際は端末や料金プランの説明は実にたどたどしいうえ、契約後はカスタマーサービスに誘導されるというていたらくでした。

もともと信用のある大手キャリアと違い、安さだけがわかりやすさのベンチャー系MVNO業者がこれでは、うさんくさいと思われても仕方のないことではないでしょうか。

さらに最近はサービスの延期なども相次ぎました。電話かけ放題アプリ「だれでもカケホ」や新料金プランである「10分かけ放題」は開発の遅延を理由に延期となったのをはじめ、月1度回線を太くしスピードを増速する「増速マラソン」というキャンペーンが2017年7月に途切れるということがありました。

また、端末についても、同社製品の「SAMURAI REI」の新色であるメタルレッドが発売中止となったうえ、2017年に入ってからは、毎月続いていた新機種の発表もぷっつりと途絶えてしまいました。お得な料金プランや斬新なサービス展開などで本誌でもたびたび取り上げることはありましたが、思い返せばこのような「息切れ」とも取れる状態にあったということかもしれません。
  • 民事再生法申請は想定の範囲内
    魅力が薄い端末事業の末路
    
このように、枚挙にいとまがないフリーテルのおかしなエピソードは、強気の経営方針と実態がいかにかけ離れていたかを証明していますが、それでも楽天がフリーテルに目を付けたのは、やはり業界6位であった43万人の契約者数といえます。

楽天は通信事業以外にもEコマース事業をはじめ、さまざまな事業を抱えており、ユーザーが楽天ポイントをサービス横串でためたり使ったりできる「マーケット層」を築いています。

したがって、43万人の会員数は単純にMVNO事業の範囲にとどまらず、グループ全体に恩恵をもたらすのです。人気タレントを使い大体的にコマーシャルを打つことで成長してきた業界6位の事業を5億2千万で買収できたのだから、同じようにマーケティングに多額の投資をしている楽天としてはさぞおいしい買い物だったでしょう。

その後、プラスワン・マーケティングは買収されずに残った端末事業を継続しましたが、既に述べたとおり、民事再生法を申請することになりました。
まず考えたいのが、フリーテルの端末に対する評価です。増田社長が国産にこだわり、世界一を目指すと意気込んでいましたが、本誌のスマホレビューでも「SAMURAI 極」を除いて、目立って高い評価を得た機種があったわけではなかったのです。価格、機能、デザインすべての面において、思わず手に取りたくなるほどの魅力がないのは致命的だったといえます。

実際に、買収されずに残ったというのが、すべてを物語っているわけであるが、スマホジャーナリストの両名も製品へのロイヤリティーを持つだけの魅力がないことは、民事再生法申請への自然な流れだったといえます。
  • 楽天買収後のフリーテル
    サービスは継続されるのか
さて、メディアやCMによって認知度が高まり、急速に成長したMVNO業界。この意味ではフリーテルの積極なプロモーションもそれに少なからず寄与したとみることはできるでしょう。

そんなMVNO業界の今後について、佐野氏は「700社あろうといわれているMVNO業界は、今後フリーテルの買収と同じように、資金力がないベンチャー系業者が買収、淘汰されていくだろう」と指摘します。MVNO市場の成長も一段落し、キャリアが自社会員の囲い込みに動くなかで、力のないものが力のあるものに買収されていくという構図です。

もっとも、市場の成長からはごく自然なことではありますが、無視してはならないのがユーザーの存在。倒産や買収が影響を及ぼすのは、なにもステークホルダーに限った話ではなく、従来そのサービスを利用していたユーザーが変わらず同じクオリティのサービスを利用し続けられるのか、しっかり守られるようにされるべきです。
フリーテルの買収によってMVNO第3位になった楽天。現在のところ、フリーテルのサービスを継続して提供すると発表していますが、それは確実にきまった話ではありません。フリーテルは使った容量に応じて料金が変わっていく段階制の料金プランを採用していたほか、特定のアプリやサービスの通信が無料になる「カウントフリー」のプランを提供していました。

これらのサービスをずっと継続していくかは不透明です。佐野氏は「自社の通信設備とフリーテルの通信設備がダブっている状態は二重投資にもなり、楽天にとってはムダ。将来的には一本化していくと思われる」とし、「その場合、どこかのタイミングで客単価が低いフリーテルのサービスを楽天のキャンペーンによって巻き取っていくという可能性は否定できない」と予想しています。

こうなると、フリーテルのサービスを好んで使っていたユーザーは乗り換えを検討する必要が出てくるかもしれません。

しかしこれでは、せっかく得たユーザーを結局流出させることにもなるので、楽天にとっては、なんらかの対策を打って、ユーザーがついてくることができるサービスを提供する必要が出てくるでしょう。

これについて石川氏は、ポイントを利用できる楽天の他のサービスとの連携を進めることによって、フリーテルの既存ユーザーを流出させないようにするという予想をしています。

楽天はポイントが倍になる期間限定のキャンペーンを頻繁に行っている。キャンペーンをうまく利用することで、楽天市場などのオンラインモールで安く買い物ができるなどのメリットを、フリーテルの既存ユーザーにアピールしていくこととなるのでしょうか。
  • 淘汰されていくMVNO業者
    ユーザーが置き去りにされる可能性も
MVNO市場の動向でもう一点注目したいのが、ITについて詳しくない高齢者ユーザーが、従来のキャリアから乗り換えてくるケースが徐々に増えているということです。

家電批評でもたびたび「格安SIM」特集などでプラン選びを特集しているように、どういう環境で使っているユーザーが乗り換えると安くなるのか、また、乗り換えることによって料金以外にどういったメリットがあるのかなど、よくわからない点も少なくありません。

先ほどMVNO業者は700社ほどあると記述しましたが、ITに詳しくないユーザーが情報を得るために使う、テレビCMや新聞広告などは多額の費用がかかるため、ベンチャー系の通信業者は広告があまり打てず、市場成長の割には認知度が高まっていないのが現状です。

ITに詳しくないユーザーを取り込んでいくために必要なのは、やはり店舗を拡大していくことです。わかりにくい格安SIMについて、店舗スタッフが親切に説明してくれる環境を提供するのがベストなのです。また、ユーザーの意見を吸い上げることもできるため、製品開発にも生かすことができます。

しかし、こちらもやはり多額の投資が必要。それができるのが結局、資金力のある企業か、もしくは本業を別に持ち、余裕をもって経営できる業者のみであり、反面資金力に乏しく安さだけを売りにしているベンチャー系のMVNO業者は、フリーテルのように今後ますます顧客の獲得が厳しい状況に追い込まれていくとみられます。

こういった意味では、既に店舗を展開しているフリーテルは有利ではないでしょうか。資金力のある楽天なら、より一層店舗拡大が可能であるし、プラスワン・マーケティング時代に低いとされた店舗サービスのクオリティも向上させることが可能です。

さらに、最近の動きとして、MNO業者が格安スマホの発売や、格安プランを提供するようになっていることも重要なポイントです。これはMVNO市場拡大に対して、キャリアが会員の流出を防ぐために行っていることですが、もともとMVNOはMNOであるキャリア系の回線を借り受けている状態で、速度はどうしても劣ってしまいます。

にもかかわらず、MNO業者がサービスを充実させることで、MVNO業者の強みであった「安さ」の差が埋まってくると、各MVNO業者はサービスの独自性を強めていかざるを得ません。

この問題については、資金力で強みのある楽天が持ち前の企画力を生かせるかに注目したいところです。フリーテルの買収は、単に1つの会社の業績悪化による買収劇と捉えるにはあまりにたくさんの教訓を残したといえます。

MVNO市場は瞬く間に成長したが、成熟度という点ではまだまだである。つまり、フリーテルの「ここがヘンだった」というエピソードは成長の勢いに乗ったベンチャー企業の1つの未熟な姿を表しているのではないでしょうか。

これからも同様にベンチャー系通信業者が淘汰されていくことが予想される。ユーザーがそれに巻き込まれ、負担や損害を被ることのなきよう、業界全体の取り決めや、総務省や消費者庁など、関係各省の介入が必要でしょう。

以上フリーテルの凋落について解説しました。楽天を含め今後のMVNO業者すべてにおいていえることですが、会員の獲得には熱心で、契約後は他人事といったことにならないことを願うばかりです。
360.life(サンロクマルドットライフ)は、テストするモノ誌『MONOQLO』、『LDK』、『家電批評』から誕生したテストする買い物ガイドです。広告ではない、ガチでテストした情報を毎日お届けしています。

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